ながらくお待たせしました。
前回は2月にいろは歌をとりあげ、「明治以降昭和までに何度か、マスコミがこのいろは歌に挑む作品を募集し、数々の名作が発表されたことはあまり知られていません。それがどんなものかはこのつぎに」といいながらはや2ヶ月。年度末、新学期と忙しさに取り紛れ・・などと野暮な言い訳はやめにしてさっそくご紹介にとりかかりましょう。
明治時代を代表する新聞のひとつ『萬朝報(よろずちょうほう)』が新しい「いろは歌」を懸賞募集し、入選作20編を発表したのは明治36年7月15日の紙面。
第一等に選ばれた作品は
とりなくこゑす ゆめさませ みよあけわたる ひんがしを
そらいろはれて おきつべに ほぶねむれゐぬ もやのうち
(鳥啼く声す 夢さませ 見よ明けわたる 東を
空色映えて 沖つ辺に 帆船群れゐぬ 靄の内) 埼玉県・坂本百次郎
その後、しばらく「新いろは歌」の企画は途絶え、第2次世界大戦後の昭和27年『週間朝日』の募集で復活する。名作揃いの入選作からいくつかとりあげてみると
新ぬれつばめ
おえどまちうたかぜそよろ あをやぎけぶり ほんにすむ
さみのねじめへつばくらも こひゆゑぬれてゐるわいな
(お江戸街唄風そよろ 青柳けぶり ほんに澄む
三味の音締めへつばくらも 恋故濡れてゐるわいな) 茨城県土浦市・西浦紫峰
盆踊り
こよひねられじ ぼんをどり おけさそろへや わもまるく
いきなゆかたのむすめゑみ ふえにあわせつてうちゐぬ
(今宵寝られじ 盆踊り おけさ揃へや 輪も丸く
粋な浴衣の娘笑み 笛に合わせつ手打ちゐぬ) 福井県・巌教也
ビールを飲めば
びゐるをぐつとのみほせば あおいろまんすむねにもえ
うたごゑやわしきりぬれて さちゆめかなへよふけぞら
(ビールをぐっと飲み干せば 青いロマンス胸に燃え
歌声やわし霧濡れて 幸夢かなへ夜更け空) 大阪府貝塚市・西本翔蔵
夢を語らん
ゑくぼせつないきみとゐる やさしさよりそふむねのまに
ひごろおもへばわすれえぬ ゆめをかたらんうちあけて
(笑くぼせつない君とゐる 優しさより添ふ胸の間に
日ごろ思へば忘れ得ぬ 夢を語らんうちあけて) 東京都・露木竹夫
最後に昭和51年『週間読売』の入選作を
ゆきのふるさと およめいり
ゐなかあぜみち うまつれて
わらやねをぬけ たんぼこえ
はずゑにしろく ひもそへむ
(雪の故郷 お嫁入り
田舎畦道 馬連れて
藁屋根を抜け 田圃越え
葉末に白く 陽も添へむ) 奈良県生駒市・久保道夫
『ことば遊びコレクション』(織田正吉・講談社現代新書)より
2007年04月21日
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